PoCとは?新規ビジネス立ち上げでのおすすめの進め方とメリットをわかりやすく解説

2024年11月14日

こんな課題をお持ちのWebマーケティング担当者向けの記事です

Webマーケティング領域で新規事業を立ち上げたい、または新規事業を立ち上げようとしているが思うようにいかないことに悩んでいる企業の担当者の以下の課題にお答えする記事です。

  • PoCとは何か、どのようなメリットがあるかを知りたい
  • PoCを活用した具体的な事例や成功のためのポイントを知りたい

この記事ではPoCの概要やPoCを実施するメリット、PoCの進め方やPoCを外部企業と連携することをおすすめする理由についてご紹介します。

その他、新規事業を立ち上げる際のアイデア発想法や国内外の成功事例など、新規事業立ち上げの全体像を知りたい方はこちらの記事もご覧ください。

PoCとは?

新規事業立ち上げの際に導入される「PoC」とは、「Proof of Concept」の略で、日本語では「概念実証」と訳されています。

具体的には、ブレインストーミングなどを行なって発想されたアイデアについて、どの程度のユーザー数(顧客)を獲得できるか、システムが想定通りのパフォーマンスを発揮するか、実現した際にどの程度のコストがかかるかなどを検証することを意味しています。

PoCを行わずに開発を始めてしまうと、ニーズがないものにコストをかけてしまうこととなり、企業の収益が悪化する恐れがあるため、近年の新規製品開発や、新規サービス開発の場面では多くの企業がPoCを取り入れています。

新規ビジネス立ち上げにおけるPoCのメリットと重要性

大きな失敗を回避できる

PoCを実施することで、アイデアや技術が市場に受け入れられるか、あるいは現実的に効果を発揮できるかどうか、早期に確認できます。

これにより、実現不可能なプロジェクトや誤った仮説に基づく事業計画を進めてしまうリスクが軽減され、初期段階で方向性を見直すことができる可能性が高まります。

PoCは小さなテストに過ぎませんが、これを行うことで本格的な開発後に発生する大規模な失敗や無駄な投資、損失などを防ぐことが可能になります。

事業リスクの早期発見につながる

PoCは、プロジェクトに内在する技術的、運用上のリスクだけでなく、事業的、経済的なリスクを早い段階で浮き彫りにする役割を果たします。

例えば、新しい技術の実装の難易度や、法的制約、市場での受容性といった課題がテスト段階で明らかになるため、開発段階や市場投入後に予想外のリスクに直面する可能性が低くなります。

リスクの早期発見は、対策を講じる時間を確保し、プロジェクト全体の成功率を高めます。

必要なコストを算出できる

PoCを通じて、これから実行しようとしている事業に必要な人的資源(リソース)や金銭的なコストを見積もることができます。

プロトタイプや小規模なテストであっても、実際にかかるコスト(人員、技術、時間)を見積もることで、本格的な開発にかかる費用や、市場投入後に必要となるマーケティング予算などがより明確になります。

これにより、過大または過少な予算計画を防ぎ、事業が持続可能な範囲で進行するように設計することが可能です。

投資判断の材料になる

PoCで得られた成果は、投資やリソースを配分する際の判断材料として活用されます。

投資家や経営層にとって、事業の将来性や見込みを検討するうえで実証データが重要な判断基準になるため、PoCによって信頼性のあるデータが得られれば、外部からの資金調達も円滑に進む可能性が高まります。

また、事業の進捗や実現性を数値で示せることから、内部リソースの最適な配分にもつながります。

新規ビジネス立ち上げでのPoCの進め方

1.PoCの目的を明確にする

新規事業を立ち上げる際にPoCを実施する場合、まず第一にPoCを行なう目的を明確にすることが重要です。

PoCはビジネスアイデアの実現可能性や課題の抽出などを目的として行なうものであり、PoCを実施することで「市場のニーズがあるか」「算定しているコストに収めることができるか」などを確認することができます。

目的を明確にすることで、成功か失敗かの判断を行なう際の基準を明確になり、関係者の認識も統一されます。

2.PoCのゴールおよび実施計画を策定

目的が明確になったら、PoCで達成すべき目標(ゴール)および実施計画を策定します。

ゴールは具体的な数値目標とすることが望ましく、目的に合わせた目標であることが求められます。

数値目標の具体例としては「売上高」「会員登録数」「継続利用率」「ユーザー満足度」などがあげられます。

実施計画は十分かつ短期間で設定し、スケジュールに合わせて関係者の役割や行なうべきタスクを明記しておきましょう。

3.PoCの方法を決定する

PoCの方法は目的に合わせたさまざまな方法がありますが、代表的な4つの方法を紹介します。

■プロトタイプ開発

製品やサービスの簡易なものを開発し、ユーザーに提供する方法です。

Webサービスの世界でも多く採用されており、ユーザーの行動データやフィードバックを受けやすい手法です。

ユーザーへの提供方法は、一部の地域やユーザーに限定する「パイロットテスト」と呼ばれる手法もあります。

■ランディングページ、デモ動画

プロトタイプを開発する前に、市場のニーズを測る方法として、これから事業を行なう製品やサービスの内容を紹介するランディングページや動画を公開する方法です。

新しい製品やサービスのアイデアやコンセプトを視覚的にわかりやすく伝えることで、実際に市場やターゲットに想定しているユーザーの関心を得られるかを確認します。

■ユーザーインタビュー

ターゲットとなる見込み顧客を抽出し、ニーズがあるかをインタビューしたり、既存サービスのユーザーを集めて新サービスの感想をフィードバックしてもらう手法です。

リアルな顧客の感想を聞くことで、ニーズの深掘りや改善すべき点を明確にすることが可能です。

■技術検証

新技術を活用する場合や、自社で新規開発を行なっている場合、システムが想定通り動くかを検証する方法です。

大規模展開を実施する前に不具合の改善やリスクの洗い出しを行なうことができます。

4.実験や検証の実施

PoCの方法を決定したら、実際に実験や検証を実施していきます。

ここで得たデータを基に、PoCの目的が達成されているか、改善点が見つかったかなど、次のステップに進むことができるようになります。

このとき、できるかぎり客観的かつ正確なデータを収集することが重要です。

また、想定外のトラブルが発生する可能性も高いため、臨機応変に対応することも必要です。

5.結果をもとにPDCAを回す

PoCで得られた結果をもとに、PDCAサイクルを回し、改善と最適化を行ないます。

PDCAとは、「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Action(改善)を繰り返すプロセスで、ここでは「Check」や「Action」を行ないます。

目的がニーズの把握であれば、基準となる見込み顧客数が獲得できたか、獲得できなかったらどう改善するか、もしくはニーズがないと撤退の判断をするべきかなどを検討します。

プロトタイプを提供している場合は、ユーザーが求める機能を提供できていたか、不具合は解消されたかなどを確認します。

6.PoCの成果を共有し、次のステップへ進む

PoCの結果は社内や社外のスポンサーなどと共有し、意思決定の材料となります。

PoCの内容を他部門と共有することで、他のプロジェクトの参考となる場合もあります。

PoCが成功していれば、具体的な開発や製品化に進めることができる根拠となり、上手く行かなかった場合は方針転換や課題解決に向けたフェーズに移行します。

Webを活用したPoCのトライアル事例

メルカリShops

フリーマーケットサービス「メルカリ」は、個人事業主や中小企業を対象としたオンラインショップのプラットフォームサービス「メルカリShops」を立ち上げる際、サービス概要を紹介するLPとデモ動画を公開しました。

これにより、同サービスに興味がある個人や中小企業の反応を確認することで、リリース前の需要予測に役立てました。

Instagram

写真共有をベースとしたSNS「Instagram」は、プロトタイプを作成し、ユーザーからのフィードバックをもとに不要な機能を削除していきました。

このようにプロトタイプをシンプルにすることで、直感的なデザインとなりました。

また、ユーザーからのフィードバックを元にハッシュタグ検索の機能を追加するなど、機能改善も行われています。

Gmail

Googleの無料メールサービス「Gmail」は、当初ユーザー体験に関するデータ収集を目的として、アカウントを持つ全ユーザーに開放せず、招待制で運用されていました。

招待制にすることにより、大規模なサーバーを用意せず、データ収集をしながらサービス品質を向上させることができました。

外部のPoCの支援会社を活用するメリット

Xの投稿時間

新規事業立ち上げ時にPoCを行なう際、より短期間で質の高いPoCを実施するための手段として、知見を有するPoC支援会社などを活用する方法があります。

PoCを支援する会社を活用するメリットとしては、以下のようなものがあります。

市場調査・分析の実施

PoCを支援する会社の多くは、PoCに関する豊富な知見を持っており、新規事業立ち上げを行なう対象の市場トレンドや競合の状況について事前に把握しています。

これにより、PoC開始前やPoCを開始する段階で、事前にある程度顧客のニーズを分析したり、顧客の行動を的確に予測することができるため、効率的に調査・分析を行なうことができます。

プロトタイプ開発・ビジネスモデル構築のサポート

新規事業立ち上げの経験が乏しい場合、PoCに携わった経験がある会社と連携することで、プロトタイプ(試作品)を作成する段階やビジネスモデルの構築についてサポートを受けることができます。

プロトタイプ開発には、まず顧客にとっての「必要最小限な製品」は何かを検討する必要があり、ノウハウのある企業のサポートを受けられるメリットだけでなく、テスト環境の整備などについても助言を受けることができます。

また、ユーザーからのフィードバックを元に改善を行なう際の優先順位などの施策面だけでなく、収益計画や投資計画など、事業全体についてもアドバイスを受けることができます。

マーケティング戦略の立案と実行

PoCにおいては、ユーザーからどのようにフィードバックを受けるか、どうすればより多くのフィードバックを受けられるかを検討することが重要です。

フィードバックを受ける手段はアンケートだけでなく、インタビューやソーシャルメディアの活用など様々なため、PoCを効果的に実施するためにはマーケティング戦略が必要となります。

PoCに知見を有する企業と連携することで、マーケティング面でも戦略立案と実行が可能となります。

リソースとスキルの最適な活用

PoCの成功には、専門的な知識やリソースが必要ですが、自社内でそれらすべてを賄うのは難しい場合があります。

PoC支援会社を活用することで、客観的な視点でビジネスプランを評価することができたり、効率的なPoCの実施が可能です。

また、PoCに必要なリソースについても、必要に応じて増減が可能なため、リスクを抑えながらPoCを進めることができます。

まとめ

近年多くの企業で、新規事業を立ち上げる際に「PoC」が導入されています。

PoCは少ないコストでニーズの把握、ユーザーからのフィードバック、不具合の特定と改善などがはかれ、将来的な大きな損失を回避できることがメリットです。

PoCを行なう際は目的を明確にし、目的に沿った数値目標とスケジュールを立てることが重要です。

なるべく客観的なデータを基に達成、未達成の判断を行ない、事業化や方針転換など、次のステップに進めるようにしましょう。

客観的な視点でPoCを行なうためには、外部のPoC支援会社に相談することも有効です。

ディレクターバンクではWebマーケティングの運用支援だけでなく、新規事業の立ち上げなどのご相談もお受けしています。

新規事業を立ち上げたいがアイデアがない、PoCをどうしたら良いかわからないなど、新規事業立ち上げに関するお悩みがありましたら、ぜひご相談ください。

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山口優

2017年にIT企業を退社しフリーランスとなる。自ら企画したブログメディアやSNSを中心としたマーケティング活動を行なっている。現在は動画製作とHubSpotを勉強中。