近年のスマートフォン・SNSの普及により、日々大量のデジタル情報にさらされている消費者は、常に「自分にとって必要か、本当に信頼すべきか」という判断に迫られています。企業の情報・一般ユーザーの情報・広告など様々な情報がある中で、「煩わしく、信頼度の低い情報」と倦厭されがちなのが広告であるのに対し、信頼度の高いと判断されているのが、ユーザー生成コンテンツ(UGC)です。コロナ禍で外出がままならず、オンラインで情報収集することも増えた今、オンライン上に公開されているUGCを資産と捉え、さらに拡充しようとする企業の動きが高まっています。
今回は、インスタグラム上でUGCを醸成し、自社のマーケティング活動に取り入れている丸石織物さんへのインタビューを交えながら、「UGCとは?」という基本的な解説から、UGCをマーケティング活動に取り入れる具体的な方法までをご紹介していきます。
UGCとは?
UGCとは、「User Generated Content」の略で、企業やプロではなく一般ユーザーによって作れられたコンテンツの総称です。
「ユーザー生成コンテンツ」と呼ばれることもあり、個人によるSNS投稿、ブロク記事、レビューサイトへの書き込み、動画や音楽など、コンテンツの形式に限りはありません。
UGCの具体例には、こんなものがあります。
●購入者や利用者のクチコミやレビューコメント
飲食店、家電、書籍、化粧品、宿泊施設、観光スポットなどはイメージしやすい事例です。
●食品を使ったアレンジレシピのSNS投稿やブログ記事
・インスタントラーメンに、好みの調味料をちょい足し
・ソーセージの飾り切り
●アパレルアイテムのコーデをSNSに投稿
●手芸やDIY家具の完成写真をSNSやブログに投稿
これらすべて、UGCと呼べるコンテンツです。
コロナ禍で外出がままならず、オンラインで情報収集し、そのまま購入する機会も増えた今、一般消費者が購買を決定する際の判断材料として、UGCは大きな影響力を持っています。
例えば、飲食店からテイクアウトメニューを注文しようとする際、公式HPをチェックするだけでなく、インスタグラムなどのSNSで実際に届いた料理がどんなものだったかを検索し、その飲食店を利用するかどうかを判断することがあります。これは、広告用にキレイにスタイリングされた料理ではなく、リアルな情報を求めたユーザーの行動で、UGCを参考に購買を判断した例と言えます。
他にも、
「モデルではなく一般ユーザーが着用している様子を見たい(アパレルなど)」
「プロのカメラマンではなく、一般ユーザーが撮った写真がみたい(宿泊施設、飲食店など)」
「素人でも使い勝手が良いかどうか、聞いてみてたい(家電や各種ツールなど)」
など、UGCはユーザーにとって貴重な情報源とされているのです。
これを受けて企業側もUGCを充実させる動きを見せており、「SEO対策だけでなくUGC対策も」と考えるマーケティング担当者も少なくありません。
UGCが出やすい商材
全ての商材においてUGCが生まれるかというと、決してそうではありません。ユーザーが自主的にコンテンツを投稿したいと思える商材には以下のような共通点があります。
有形商材である:カタチがあり、手に触れることが出来る商材は、写真や動画に収めやすいため、投稿されやすくなります。
表現の幅がある:アパレル、ダンス、料理、工作、など、自己表現の一部になりうる商材であれば、「誰かに見せたい」という心理がはたらき、UGCが生まれます。
リアルな会話でも語られている:普段の会話に出てくるような身近な商材であれば、デジタル上でも自然にUGCとなり得ます。反対にコンプレックス商材や、日雑品などリアルでも語られることが少ない商材のUGCは生まれにくいとされます。
ただし、上記に該当する商材でも、文脈に一工夫すればユーザーに語られやすくなることもあるので、あくまでUGCが自然発生する商材の傾向性、として捉えていただければと思います。
マーケティング活動におけるUGCの活用とは?
では、そのようなUGCを、企業のマーケティング活動に取り入れるとは一体どういうことなのでしょうか?
実際に、顧客のUGCをフル活用し、成功事例をお持ちの丸石織物さんに、その活用方法を聞いてみました。
インタビューにご協力いただいたのは、この人!
1. 自社サイトのコンテンツ開発
Q. 御社は、どんなUGCをマーケティングに活用されているのですか?
丸石織物は、布地の販売をしています。商材の特性として「生地を購入して終わり」ではなく、デザインを決め、裁断、縫製というプロセスを経て、はじめて完成するので、商品購入を検討する上で、作例を参考にされる方はとても多いのです。
ですが、企業側でサンプル縫製を手配しようとすると、かなりのコスト感になり、全ての布地に対して作例を準備するのは現実的ではありません。
そこで、お客様の作例を紹介させてもらえないかと考えました。インスタグラム上で作例を投稿してもらい、自社サイト・自社インスタアカウントでご紹介させていただいています。
もし、これらの作例づくりを全て自社でまかなおうとすると、…かなり大変です。
Q. どんな風に作例投稿を呼びかけたのですか?
チラシで告知をしたり、自社サイトやSNSなど、あらゆるWEBチャネルで呼びかけました。最初はなかなか投稿してもらえませんでしたが、一つ一つの投稿に丁寧に向き合い、コミュニケーションを続けているうちに、徐々に投稿数が増えてきました。
何かを作った後は、誰かにお披露目したいものですからね。インスタのストーリーズで紹介をすると、とても喜んでもらえました。そうすると「次も作ったら投稿しよう」と思ってもらえるのです。今では、かなりの数の作例をHP上でご紹介させていただいています。
2. 購買意欲喚起と購入ページのCVR向上
Q. 作例をHPに掲載することのメリットは?
サイト上に作例の掲載がある場合とない場合では、格段に転換率(CVR)が違います。感覚値ですが、1〜2%アップしているイメージです。
例えば、「コットン50%・ポリエステル50%」という丸石オリジナルの綿ポリで、お子さんの七五三用に袴を作ったお客様がいらっしゃいました。その完成品を SNSやHPでご紹介したところ、七五三の衣装用に綿ポリを購入される方が増えたことがあります。
3. 購入ページのクチコミの質を上げる
Q. 他に、UGCの醸成に注力したことで得られたことは?
楽天の商品レビューがよくなりました。お客様に作例を投稿し続けてもらうために、日頃からインスタ運用をしていた延長で、レビュー欄であっても双方向コミュニケーションが取れている感覚があります。実際に「インスタ、いつも見ています」などレビューコメントに添えてくださる方もたくさんいらっしゃいます。
日頃から「人感」がにじみ出るようなインスタ投稿を心がけていたので、サイトの向こう側にも、見てくれている人がいることが伝わっているのだと思います。こういう関係性が築ければ、レビューが荒れることも少なくなるのではないでしょうか?
4. 新商品のアイデア創出
Q. お客様の声を商品開発に生かしていると聞きました。
インスタのコメントでアイデアをいただくこともあれば、常連のお客様に電話インタビューをすることもあります。自社製品に不満がないか、改良してほしいポイントはないか、など赤裸々に語っていただくのです。
こういうお客様との関係づくりも、元をたどれば作例を投稿してもらうことが起点となっています。
UGC活用に向いている企業とは?
Q. UGCの活用やインスタの運用などを検討している企業さんへのアドバイスはありますか?
お客様とのやりとりやインスタ運用を継続できているのは、純粋に楽しいからです。売上への貢献もさることながら、お客様がどんな風に自社商品を使っていらっしゃるのか知ることは本当に楽しいです。「こんな使い方があるのか!」と驚くこともたくさんあります。
また、お客様と向き合うスタンスとして、誰かの真似をするのではなく、自社らしさの本質を捉えて表現するようにしています。インスタ運用を始めた頃は、他の成功事例を参考にしながら「映えるインスタ担当者」を演じようとしていました笑。ですが、杓子定規な投稿や対応をしていても、丸石織物らしさは伝わりません。企業アカウントであっても「人となり」が伝わって初めて、コミュニケーションが成立することに気づかされました。SNS上であっても人間関係であることに変わりはないので、衝突することが多少あったとしても、それもアリだと割り切って運用をしています。
もし、日々のインスタ運用を苦痛に感じるほど苦戦しているのであれば、他のマーケティング手法に切り替えるのも名案だと思います。例えば、自社の認知拡大ならインスタのフォロワー獲得よりもリスティング広告の方が効果的な場合もあるでしょうし。
UGCを活用したマーケティング支援
丸石織物さん、貴重なお話をありがとうございました!
「UGCを自社のマーケティングにぜひ取り入れてみたいが、どこから始めればいいかわからない」という方は、ぜひディレクターバンクまで。インスタやその他のプラットフォーム上でUGCを醸成するための戦略策定から運用まで、経験豊富なディレクターがサポートいたします。
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