インバウンド拡大、そして2020年の東京オリンピックを2年後に控え、WEBサイトの多言語化対応を検討中の企業、WEB担当者は多いのではないでしょうか。しかし、社内には人材がおらず、外注するにもどこに頼んだら良いのか、分からないことも多いと思います。WEBサイトの多言語化対応で最近よく目にするのが、クラウド翻訳サービスです。WEB上で依頼でき、多くの場合、各サービスが契約しているクラウド翻訳者が翻訳を行います。今回、クラウド翻訳サービスについて、メリットや料金相場、翻訳者の選定など、主要なサービスと利用する場合の相場感を調査、比較しました。
クラウド翻訳サービスとは
クラウド翻訳サービスのメリット
- 少量から簡単に依頼が可能
- いつでも依頼可能で納品が早い
- 料金が比較的安い
基本的に、一般的なWEBサイトの多言語化対応に、クラウド翻訳サービスは向いています。急いで翻訳が必要な場合にも便利です。
クラウド翻訳サービスと、翻訳会社に依頼する一般的な翻訳サービスとでは、どのような違いがあるのでしょうか。クラウドではなく、一般的な翻訳会社に依頼した方が良いケースとしては、次のような案件が考えられます。
一般的な翻訳会社に依頼したほうが良いケース
- 翻訳する原稿のボリュームが大きい
- 業界特有の専門用語が多い
- 通常より高度な翻訳が必要
クラウド翻訳サービスでは、サービスの提供会社と契約している翻訳者が翻訳を行う形が一般的です。そのため、翻訳者によって翻訳のレベルは多少変動します。また、あまりにも翻訳する原稿のボリュームの大きいことや、専門用語が多用されている、高度な翻訳技術が求められる原稿などは、対応が不可能ではないものの、通常よりも手間や時間、料金がかかるので、一般的な翻訳会社に依頼した方が効率的です。
ただ、WEBサイトのコンテンツ翻訳に関しては、原稿のボリュームが少ないこともあり、クラウド翻訳サービスでも効率的と言えます。
クラウド翻訳サービスの最新相場調査
1.パソナ・パナソニック ビジネスサービスのクラウド翻訳(パソナ・パナソニック ビジネスサービス株式会社)
サービス名の通り、パソナ・パナソニック ビジネスサービス(株)が提供するクラウド翻訳サービス。同社は、パソナグループ、パナソニックグループ両方のノウハウを活かし、マーケティングから総務全般まで、BPO事業を展開している。クラウド翻訳では、ごく少量の案件から可能で、ちょっとした翻訳案件でも気軽に利用できる。
サービスの特長
- 登録翻訳者は、合格率数パーセントの翻訳試験合格者のみ
- 管理チームが誤訳、訳抜けなどを厳しく審査
- 業界独特の用語などの対応は、翻訳依頼時に備考欄に記載
- 英語以外では、中国語(繁体字)、中国(簡体字)、韓国語、インドネシア語、タイ語、スペイン語に対応
利用者の特徴
- メーカー系、多言語展開するBtoCサービス業を始めとした幅広い業界
- 海外との商取引のためのメールや規約の翻訳などの案件もある
- 最近は観光業界のインバウンド利用が増えている
利用料金
5円/文字の料金プランの利用が7割程
- 翻訳キャリア2~3年の翻訳者による翻訳
- 10円/文字の料金プランもある。翻訳者は翻訳キャリア10年以上
- ダブルチェックには対応していないが、校正・ネイティブチェックについては別途専門の翻訳サービスあり
納期
※1500文字(Word2ページ程度のボリューム)の翻訳を依頼した場合
- 平均的な納期は数時間前後。一般的な翻訳サービスでは依頼しにくい少量の翻訳案件がメインのため
- 翻訳依頼時、翻訳者とマッチング後、翻訳完了までの推定時間を確認の上、発注する流れとなる
2.crowdhonyaku.com(クラウドパワーパートナーズ株式会社)
クラウドパワーパートナーズ(株)が提供するクラウド翻訳サービス。高い翻訳スキルを持つコミュニティを基盤に、テレワーク型のプロジェクトマネージメントによるソリューションを提供している。翻訳サービスの他にも、海外デスクリサーチからコンテンツマーケティング、メディア運営支援などの事業も手掛けている。
サービスの特長
- ディレクション型の翻訳サービス。翻訳トライアル合格者2,500人から、スキルと過去の経験を踏まえ、案件に合う翻訳者を選定してもらえる
- 英語の他に、中国語(繁体字・簡体字)にも対応
- 通常チェックとネイティブチェックが入る
利用者の特徴
- PR会社や新聞社など翻訳に厳しい業界でも利用されている
利用料金
15円~/文字のエキスパートプランがおすすめ
- 納品後、そのまま公開できる翻訳レベル
- 通常チェック、ネイティブチェック込み
- ボリュームと納品形式で料金が変動、翻訳者側で書き起こさないといけないデータ形式などは料金が上がる
- 発注者側で編集するならば、10円~14円/文字のビジネスプランでも良い
納期
※1500文字(Word2ページ程度のボリューム)の翻訳を依頼した場合
- 通常翌営業日の納品
3.TRANSMART(トランスマート株式会社)
トランスマート(株)が提供する翻訳サービス。本サービスの他、翻訳ツールの提供、個別専門翻訳サービスも展開しており、翻訳事業に特化した会社。18年で累計87,000件以上(2018年9月時点)の専門翻訳実績あり。「アジアBOPプラットフォーム」の構築を掲げるソーシャルワイヤー(株)が親会社。
サービスの特長
- 登録翻訳者はプロ翻訳者のみ、登録時と受注時の二度のテストがある
- キーワード検索により案件に合った翻訳者を検索できる
利用者の特徴
- IT関連の案件が多い
利用料金
10円/文字のビジネスプランがおすすめ
- ダブルチェックには対応していない
- 納品後3日以内の差し戻しは可能
納期
※1500文字(Word2ページ程度のボリューム)の翻訳を依頼した場合
- 発注→翻訳者確定→納品までの平均1日
- 最短数分の事例あり
4.Conyac
(株)エニドアが提供するクラウドソーシングを活用したバイリンガルプラットフォーム。翻訳だけでなく、調査・代行や動画・画像・音声作成など、幅広い業務をグローバルに行っている。Conyac(コニャック)の他に、医薬・化学・機会・IT・法務・金融などの専門分野に特化した高精度の自動翻訳「T-400」も提供。
サービスの特長
- 9万人以上のバイリンガルが在籍
- 独自のレベルテストに合格した翻訳者のみ登録(Standard翻訳)
- 翻訳者のプロフィールあり、ネイティブ言語や得意分野などから翻訳者を選定できる
- 事前テスト翻訳でクオリティ確認可能
- 日本語からの翻訳に対応しているのは、英語以外にフランス語・ドイツ語・スペイン語・韓国語・中国語(繁体・簡体)・タイ語・インドネシア語・ベトナム語
利用者の特徴
- AI研究、印刷、媒体、ゲーム・アプリ、IT情報、WEB情報サイトの事例が多い
- 費用をなるべく抑えたい場合、Conyacの利用が多い
- 手間をできるだけ省きたい場合は、やや料金は上がるが、翻訳者選定から納品まで代行するサービスが利用される
利用料金
6円/文字のスタンダードが主流
- ダブルチェックはオプションで6円/文字
- 翻訳者指名はオプションで3円/文字
納期
※1500文字(Word2ページ程度のボリューム)の翻訳を依頼した場合
- 発注から納品まで平均1日
5.WOVN.io(Wovn Technologies株式会社)
Wovn Technologies 株式会社が提供するクラウド翻訳サービス。WOVN.io によるWEBサイトの多言語化に特化したサービス展開を行っている。クラウド翻訳サービスの中では、翻訳者よりもシステムによるサービス提供を重視している点が、他の翻訳サービスとは異なっている。
サービスの特長
※サイト掲載情報より
- 人力・機械・プロ翻訳から翻訳方法を選択
- 機械翻訳の精度も高い
- プロ翻訳は管理画面よりクラウド翻訳会社に発注する形式
- テキスト・タグ情報・画像を一括で多言語化対応
- 動的コンテンツ・ページの多言語化対応も可能
- 海外SEOに対応可能
- 日本語からの翻訳の場合、英語以外に中国語(繁体・簡体)、韓国語、タイ語、インドネシア語、スペイン語(ヨーロッパ)に対応
利用者の特徴
※サイト掲載情報より
- ページ数が多いサイト、動的コンテンツの多言語化対応、ECサイトなどにも向いている
利用料金
6円/文字のスタンダードが主流
- ダブルチェックはオプションで6円/文字
- 翻訳者指名はオプションで3円/文字
編集部のまとめ
今回の調査概要
- 調査母数(問い合わせした企業数):7社
- 有効回答数(調査にご協力いただいた企業数):4社
- クラウド翻訳サービスの中心的価格帯は次の通りとなりました。
1文字10円前後
クラウド翻訳サービスでは、翻訳者を自社で選定するケースが多いため、翻訳者の見極めが重要です。ただ、今回調査した中心的価格帯での翻訳サービスであれば、一定レベルの翻訳者でないと登録ができないことがほとんどです。翻訳レベルよりは、得意分野や業界などに基づき選定を行うと良いと思われます。
中には翻訳者の選定も行ってくれるサービスもあるので、手間を掛けたくない場合はそういったサービスを選びましょう。
編集部では、調査にご協力いただける企業を随時募集しています。
調査協力に関する問い合わせは以下のフォームよりご連絡ください。
https://www.webtanguide.jp/contact
調査実施概要
- 期間:2018年9月3日〜2018年9月10日
- 調査方法:インターネット調査及び電話取材にて実施
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